現場
普通の塀に見えた。笠木を外すまでは

この記事の要点
- 造成工事で、30メートル分のブロック塀を解体した。
- 金属の笠木を外すと、中から木と虫。釘は約200本あった。
- 解体は「壊すだけ」ではなく、開けるまで読めない仕事だ。
道路から見れば、なんともない塀だった。
グレーのブロックが並んで、途中に透かしの模様が入っていて、一番上に金属のカバーが載っている。どこの家にもある、あの塀だ。
今日は、これを30メートル分こわす。
まず、一番上から
造成工事でブロックを積み替えることになった。新しく積む前に、今あるものを撤去する。
順番としては、一番上に載っている金属のカバー——笠木(かさぎ)という——から外していく。雨が塀の中に入らないように蓋をしている部品だ。
この下がどうなっているかは、外すまで誰にも分からない。
図面には書いていない。積んだ人ももういない。だから、開けてみるしかない。
出てきたのは、木だった
バールを差し込んで、持ち上げる。

木が入っていた。金属の笠木を、その木に釘で打ち付けてある構造だった。
そして、虫がいた。かなりの数だった。
考えてみれば当たり前で、木は水を吸う。吸ったまま金属で蓋をされていれば、乾かない。乾かなければ、そうなる。
外からは何ひとつ見えなかった。さっき書いたとおり、塀の見た目は普通だった。
もう一つ出てきたもの
釘だ。
抜いた分だけで、約200本。
30メートルで200本。単純に割れば、15センチおきに1本打ってある計算になる。それを、全部抜く。
「壊すだけ」が、一番読めない
解体は楽だと思われている。積むより簡単だろう、と。
実際は、逆のことが多い。

まず、剥がし方がある。バールをどこに差し込むかで、剥がれ方がまるで変わる。力任せに引けば木が割れて、釘だけが残る。そうなると余計に時間を食う。
力じゃない。目と頭だ。
そして、壊したら終わりでもない。木は木、金属は金属、コンクリートはコンクリート。混ざったままでは処分できないから、釘の刺さった木は、釘を抜いてから分ける。
この日は3人で約2時間。そのうち、剥がしていた時間より、分けていた時間のほうが長かった。
積む仕事なら「今日はここまで」と読める。解体は、開けるまで読めない。この読めなさが、たぶん解体の一番難しいところだ。
明日には、なかったことになる
新しい塀を積んでしまえば、今日の作業は跡形もなく消える。抜いた200本の釘も、出てきた虫も、写真に残さなければ誰も知らないままだ。
でも、ここを雑にやったらどうなるか。
古い木と釘が、新しい塀の下に残る。そして何十年か先に、また誰かが同じところを開ける。そのときに「なんだこれ」と言われない仕事を、今日しておく。
外構職人の1日にも書いたけれど、この仕事は段取りで決まる。そしてその段取りのかなりの部分が、こういう誰にも見えなくなるところに使われている。
地味だ。でも、そこが効く。
よくある質問
- ブロック塀の笠木の下って、どうなっているんですか?
- 塀によって違いますが、今回は木の下地が入っていました。金属の笠木を、その木に釘で留めてある構造です。外からは見えないので、解体して初めて分かります。今回は虫もかなり出てきました。
- 解体って、ただ壊すだけじゃないんですか?
- 違います。壊したあとに分別があります。木は木、金属は金属、コンクリートはコンクリート。混ざったままでは処分できないので、釘が刺さった木は釘を抜いてから分けます。今回は約200本抜きました。
- 30メートルの解体にどれくらいかかりますか?
- 今回は笠木の取り外しと分別で、3人で約2時間でした。ただし解体は開けてみるまで中身が分からないので、事前に正確な時間を読むのは難しい仕事です。木の傷み方や釘の量で変わります。
