現場

見積21トンが、掘ったら53トンになった

掘削で露出した間知ブロック積みの擁壁

この記事の要点

  • 造成現場でブロック塀を解体したら、地面の下に擁壁が続いていた。
  • 見積の解体数量21トンに対し、実測は55トン。計上は52.97トンで、約2.5倍になった。
  • 読み違えは起きる。起きたあとに何を出すかで、仕事は決まる。

見積のとき、地上に出ていたのはブロック塀だった。

その足元に、コンクリートが少し見えていた。ブロックを積むための土台——ベースコンクリートだと読んだ。どこの現場でもそうなっているし、地中は掘らなければ見えない。

だから「既存CB解体 21トン」で出した。

掘ったら、下が続いていた

解体に入って、ブロックの上から壊していく。掘り下げていくと、ベースコンクリートが出てくるはずだった。

出てこなかった。

代わりにあったのは、現場打ちのコンクリート擁壁だった。高さ1.2メートル。それが延長29メートルにわたって、途切れずに続いていた。

土台じゃない。土を留めるための構造物だ。中には鉄筋が入っている。

もう一方は、天端だった

別の区間、延長22メートル。ここも足元にコンクリートが見えていて、同じくベースだと読んでいた。

はつってみたら、それは間知(けんち)ブロック積みの一番上の面だった。

掘削で露出した間知ブロック積みの擁壁
掘削で露出した間知ブロック積みの擁壁

天端だけが地面に顔を出していて、本体は下に埋まっていた。掘り下げた結果、幅0.65メートル、高さ約0.7メートル。それが22メートル分、地中に続いていた。

見えていたのは、全体の一番上の一辺だけだったということだ。

21トンが、53トンになった

両区間を実測して、計算し直した。

比重2.35t/m³で拾っていくと、解体するコンクリートの総量は55.46トン。当初計上していたのは21トンだ。

見積書には、そこから少し落として52.97トンで出した。実測より2.49トン少ない。端数と施工の実態を見て、控えめなほうに寄せた。

それでも、当初の約2.5倍になる。

きついのは、数量じゃない

正直、増えたトン数そのものはまだいい。数えれば出る。

しんどいのは現場のほうだ。

A区間は、隣の敷地のブロックが解体対象の擁壁に直接くっついている。隙間が一切ない。機械で一気に砕けば、隣のブロックまで持っていく。だから接触している部分は、小型ブレーカーと人力で少しずつ割っていくしかない。

そのすぐ横に電柱が立っていて、隣の家の外壁と給排水も近い。重機をどこに据えるか、アームをどこまで振れるかに全部制約がかかる。

重機と小型ブレーカーで小割りしていく
重機と小型ブレーカーで小割りしていく

もう一方の区間も、隣家の外壁が至近で重機が動かせない。はつって、割って、運ぶ。

普通の塀に見えた。笠木を外すまではでも書いたけれど、解体は開けるまで読めない。今回は、その読めなさが一番大きく出た。

読み違えたら、黙らない

ここからが本題だ。

数量が2.5倍になったとき、選べる道は3つある。

ひとつ、黙って飲む。当初の金額のまま、増えた分をこっちの持ち出しでやる。
ふたつ、黙って手を抜く。地中に残せるところは残して、上だけ壊して埋める。
みっつ、全部出して、頭を下げて、変更をお願いする。

今日やったのは3つ目だ。

経緯を時系列で書いた。当初どう想定して、掘ったら何が出て、実測でどうなったか。区間ごとの断面と計算式を全部載せた。現場写真を4枚つけた。工期が翌週に食い込むことも書いた。そのうえで、増額のお願いを出した。

ひとつ目を選ぶと、次の現場で誰かが同じ思いをする。ふたつ目を選ぶと、何十年か先に、また誰かが同じ場所を掘って「なんだこれ」と言う。

どっちも、うちがやりたい仕事じゃない。

見えないところは、見えないと言う

地中は、掘るまで分からない。これは技術の限界であって、誰のミスでもない。

だったら、分からなかったことを分からなかったと書いて、分かった時点の実測を出して、判断してもらう。そこを曖昧にごまかす会社にはならない。

未経験で入ってくる人に一番伝えたいのは、この仕事は力じゃなくて読みと説明だということだ。

現場で何が起きたかを、数字と写真で人に伝えられる。それができる職人は、どこに行っても仕事がある。

よくある質問

見積と実際が違うことって、よくあるんですか?
地中がからむ工事では起きます。地面の下は掘るまで見えないからです。今回でいえば、地上から見えていたのはブロック塀と、その足元に露出したコンクリートだけでした。そこから下がどうなっているかは、着手前の目視では確認する術がありません。大事なのは、違ったときに黙って進めないことです。
「ベースコンクリート」と「擁壁」は何が違うんですか?
ベースコンクリートは、ブロックを積むための土台です。ブロックの幅ぶんくらいの厚さで、深くはありません。擁壁は土を留めるための構造物で、土圧を受けるぶん躯体が厚く、鉄筋も入っています。今回はA区間で高さ1.2m、B区間で高さ約0.7mが地中に続いていました。重さで言えば、桁が変わります。
数量が増えたら、そのぶん儲かるんですか?
増えた分の手間と処分費がそのまま乗るだけで、得はしません。今回は実測55.46tに対して52.97tで計上しています。むしろ工期が延びて、他の現場の段取りが後ろにずれます。だから「増えてラッキー」ではなく、できるだけ早く報告して、早く決めてもらうのが一番いい。

あわせて読む

← 記事いちらんへ

ゲンバって、楽しい。

アルデコは、業界を変える最初の証明になる仲間を探しています。未経験でも、一歩目はLINEでどうぞ。

採用情報を見る