思想

2分遅れてきた2人に、半日を渡した

事務所のホワイトボードの前で話すアルデコのメンバー

この記事の要点

  • 若手2人が2分遅刻した日、半日かけて時間について考えた。
  • 答えは言わず、紙とペンだけ渡して2人に書いてもらった。
  • 2人が最後に置いた一行は「人間である為、時間を守らなくてはいけない」。

7時45分から始まる朝会に、2人が入ってきたのは7時47分だった。

たった2分。現場に穴が開いたわけでも、お客さんを待たせたわけでもない。

それでも、うちはその日、半日をこれに使った。

まず、紙を1枚ずつ渡した

書いてもらったのは、2つだけだ。

  • 時間を守ると、どうなるか
  • 守らないと、どうなるか

説教はしていない。

こちらが答えを言ってしまえば、それは会社の答えであって、2人の答えにならない。だから渡したのは紙とペンだけで、あとは待った。

半日かかった。

2人が、半日かけて書いたこと

時間を守るとどうなるか、守らないとどうなるかを書き出した手書きのメモ
時間を守るとどうなるか、守らないとどうなるかを書き出した手書きのメモ

守ると、こうなる。

  • 信頼関係ができて、仕事を任される → それが自分の自信になる
  • 自分にも相手にも時間が作れて、余裕が生まれる
  • 人が、業界がついてくる。手本になる

守らないと、こうなる。

  • 信頼してもらえない。仕事がもらえない → 自信がなくなる
  • 相手の時間を奪って、自分の時間も無駄にする
  • 人も業界も、ついてこない

そして最後の1行に、2人はこう書いた。

人間である為。時間を守らなくてはいけない。

うちが用意した言葉じゃない。半日考えて、2人が自分で置いた言葉だ。

なぜ、たった2分にここまでやるのか

うちのミッションは「人が育つゲンバを、作る。」で、採用ページにはこう添えている。

ミッション(使命)── 僕たちの、命の時間の使い方

持ち時間は、誰でも同じだけあって、増やせない。

だから時間を渡すというのは、命を削って渡すのと同じことになる。2分の遅刻は、相手の2分を奪っている。

そしてもう一つ。外構は、人の時間を増やす仕事でもある。

自分でやったら週末が丸ごと消えるような作業を、道具と手順で引き受ける。うちが返しているのは、お客さんの時間だ。それを商売にしている人間が、他人の時間を減らす側に立っていいわけがない。

朝の2分は、朝では終わらない

しかも、話はその2分だけで済まない。

  1. 朝会が2分ずれる
  2. 材料の到着や他の職方と、ぶつかる
  3. ぶつかれば、手が止まる
  4. 止まれば、その日の目標に届かない
  5. 届かない日が重なれば、工期に出る

外構職人の朝は、朝会の15分で決まるにも書いたけれど、この仕事は段取りで決まる。

朝の緩みは、工期まで届く。

業界は、どこか遠くにあるわけじゃない

うちのビジョンは「子どもが『ゲンバで働きたい』と言ったとき、親が笑ってうなずける業界にする」だ。

でも、業界というものがどこか遠くに立っているわけじゃない。

自分が変われば、周りが少し変わる。周りが変わればゲンバが変わる。そのゲンバが積み重なったものを、人は業界と呼んでいる。

業界とは、自分自身のことだ。

だから、うちの成長の5か条は、この1行から始まる。

すべて、自分のチカラに。

遅刻を「怒られたこと」で終わらせたら、何も残らない。自分のチカラに変えるところまで持っていって、はじめて意味が出る。

半日かけたのは、そこまで持っていくためだ。

「気をつけます」では、朝は起きられない

ただ、ここで終わったら、ただのいい話だ。

気をつけて直るなら、とっくに直っている。

だから最後は、前の日の生活まで戻して決めた。睡眠時間をどう確保するか。朝、どうやって起きるか。

朝の問題は、朝には解決しない。前の日の夜に解決する。

事務所のホワイトボードには、こう書いてある。

人は、繰り返し行うことの総体である。それ故、優秀とは行為ではなく習慣なのだ。

自分はそういう人間なのではなく、そういう行動を繰り返してきた結果だ。だとしたら、今から変えられる。明日いきなり別人になることはないけれど、明日の朝は変えられる。

2分の遅刻に半日を使うのは、時間の使い方として矛盾して見えるかもしれない。

それでも、この半日で2人のこれからの朝が変わるなら、安い。

よくある質問

2分の遅刻で、そんなに厳しく言われるんですか?
怒鳴ってはいません。半日かけたのは、責めるためではなく本人が自分の言葉にたどり着くためです。こちらが答えを言えば会社の答えで終わってしまい、次の朝は変わりません。時間そのものより、余白があるかどうかを見ています。
朝は何時に集合ですか?
7時45分に席につきます。そこから15分の朝会でその日の段取りと危ないところを共有して、8時に現場へ向かいます。10分前に着いていれば落ち着いて朝会に入れるので、そこに余白があるかどうかが結局その日を決めます。
未経験でも、時間のことでいきなり詰められませんか?
詰めません。ただ理由は聞きます。寝坊なのか、家を出る時間をぴったりで組んでいたのか、道の混み方を読み違えたのか。原因が分かれば次に潰せますが、分からないままだと同じことが繰り返されるからです。
結局、精神論で終わりませんか?
終わらせないために、最後は前の日の生活まで戻して決めました。睡眠時間をどう確保するか、朝どうやって起きるか。朝の問題は朝には解決しないので、そこを具体的に決めないと「気をつけます」で流れて終わります。

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